肛門湿疹・肛門そう痒症
肛門湿疹とは
肛門の周りにできる湿疹・かぶれです。原因としては、肛門周辺の皮膚に便が残っていたり、汗などの刺激によって湿疹ができたことが考えられます。
肛門湿疹の主な症状はかゆみです。強いかゆみを伴うこともあります。軽い肛門湿疹の場合、外見上かぶれや炎症などの皮膚炎と変わりないのですが、おしりのかゆみのせいで強く皮膚を掻いたりこすることによって表皮がむけ傷つけてしまうと、ひりひりした痛みや出血する場合があります。湿疹が慢性化すると皮膚が厚くなったり、白っぽくなり、深いしわが多くなり、清潔に保つことが難しくなり治りにくくなります。まれにカンジダというカビの一種が原因のカンジダ性皮膚炎を併発する可能性もあり、カンジタの場合は全体に赤くかぶれた状態になり、かゆみもひどくなります。
肛門湿疹の予防
便による刺激をなくすため、排便後に肛門を綺麗に洗浄することは大切です。ただし清潔を意識するあまり、強い水圧でシャワーやウォシュレットを使用することは肛門の皮膚を傷つけてしまうことになり逆効果です。同じ理由で肛門を石鹸で洗ったり、ナイロンタオルで洗うことはやめましょう。
治療の注意点
湿疹用の軟膏に含まれているステロイドは、一般の湿疹には効果的ですが、カンジダ性湿疹には逆効果になってしまいます。
カンジダ性湿疹の場合は、ミズムシなどに使用する抗真菌剤を使用することが多くあります。就寝中にかゆいと無意識に掻いてしまうので、寝る前にかゆみを押さえると共に、眠くなる作用もあるような薬剤を使用することも大切です。「かゆみ」という症状は似ていますが、対処方法は全く異なりますので、きちんと専門医の診断を仰ぎましょう。
肛門そう痒症とは
肛門そう痒症は、肛門周辺に慢性的にかゆみが生じる病気の総称です。肛門がむれやすい座り仕事や、温水洗浄便座の普及によるおしりの洗いすぎなどにより、近年増えてきている病気のひとつです。温水洗浄便座で必要以上に肛門を洗ったり、トイレットペーパーなどでこすり過ぎたりすると、肛門周辺の皮膚の抵抗力が弱くなり、便や菌が付くと皮膚炎を起こしやすくなり発症することがあります。
幼児や学童では、ぎょう虫が原因のこともあります。病気だとは自覚されずに症状を悪化させることが多くあります。原因不明の特発性肛門そう痒症と、何らかの原因がある続発性肛門そう痒症に分けられます。
入浴や就任後など体が温まってくると症状が出ることが多く、肛門周囲の皮膚がふやけて変色したり、ただれ、はれ、湿疹のようになって下着を汚されることもあります。
原因
原因がはっきりしている続発性の肛門そう痒症の例
病気が原因
- 痔核、直腸脱、膣炎、皮膚炎などの病気、カビ、しらみ、ぎょう虫、便秘、下痢など
生活習慣などが原因
- 下着の締め付け、生理用品によるかぶれ、香辛料のとりすぎ
その他の原因
- 抗生物質、精神的なストレス、糖尿病や肝臓・腎臓障害、更年期障害の症状
原因がはっきりしない特発性肛門そう痒症の場合
肛門そう痒症の診断
肛門そう痒症の診断は、痔(いぼ痔、切れ痔、穴痔)、肛門ポリープ、直腸脱など大腸や肛門関係の病気がないかどうかを検査します。次に、カンジタなどの真菌の検査も行います。女性の場合、腟から肛門にかけてただれている時は腟炎も疑います。肛門のまわりにできた湿疹が治りにくいものであれば、パジェット病という乳がんの可能性もあります。きちんと鑑別診断するためには肛門組織の顕微鏡検査が必要になりますので、肛門科の専門医の診断を受ける必要があります。
肛門そう痒症の治療、予防
今出ているかゆみ症状の治療には、主に軟膏を使った治療を行いますが、内服薬を使用することもあります。同時に原因となる病気の治療を進めていきます。
予防として便秘や下痢を起こさないように便通のリズムを整えることを心がけましょう。アルコール飲料を避け、緑黄色野菜、ビタミン類を多く接取することも大切です。せっけん成分は刺激になるので、肛門はせっけんで洗わず水やぬるま湯で洗った後も紙やタオルでごしごし拭かないなど心掛けてください。拭き残った便が肛門に付着しないようにする、下痢や頻便で肛門部がしめった状態のままにしないなども大切です。またかゆくても我慢してかかず、なるべく早く肛門科の専門医を受診することが大切です。